「泉」から「いづみ」へ その23
- 2006/07/19
- 01:38
「いづみさん、いらっしゃいますか?」
わたしは駆け出したい気持ちを抑えてゆっくり玄関に向いました。
「いらっしゃい、由美さん。わざわざお迎えに来てくれてありがとう。この子、まだ女の子で外に出るの慣れてないから、面倒見てやってくださいね。」
「判りました、美佳さん。いづみさんが恥かしい思いをしなくて済むように、気を配りますので。」
「じゃあ、よろしくお願いしますね。もし行くところが無くなったら遠慮なくここに戻ってきてちょうだいね。大した事は出来ないけど、何かごちそうしますから。」
「じゃあ、夕方くらいにいづみさんをお返しすればよろしいですか?」
「そうね、こちらに来る前に電話してもらえば、何か用意しておきますから。じゃあ、二人とも気をつけてね。楽しんでらっしゃい。」
「いづみさん、私図書館が大好きなんですけど、一緒に行きませんか?」
「わたし、図書館って行った事無いんですけど、大丈夫でしょうか?」
「静かで落ち着いた場所なの。あまり大きな声を出さなければ、誰も気にしないですよ。」
「じゃあ、案内してくれますか?」
「喜んでご案内しますわ。一つ先の駅に図書館があるのを調べてきましたから。」
由美さんは先になって切符を買ったり、電車に乗る時もわたしを先に乗せてくれました。
図書館に入ってからもいろんな場所を見せてくれました。それから1冊づつ読みたい本を選んで、二人で並んで読書をしました。時々眼が合うと二人とも思わず微笑んでしまいます。
こんな素敵な場所がすぐ近くにあったのを今まで知りませんでした・・
「いづみさん、お腹空きませんか?」
図書館を出た後、由美さんが尋ねてくれました。
「はい、もうお腹ぺこぺこです。まるで男の子みたいですね。」
二人で声を出して笑ってしまいました。それから二人で静かなお店でパスタをいただきました。
由美さんはわたしより体が小さいのに、案外食欲があるのでびっくりしました。
「私昔から体が小さくて全然太れないから、たくさん食べるように言われてたんです。おかげで、今でも出されたものはみんな食べてしまうんです。女の子失格ですよね?」
「ううん、そんな事ないですよ。わたしだって子供の頃からいっつも前の方で、背の高い人が羨ましかったんですから。お腹いっぱいに食べられると幸せなんです。」
二人で「お互い色気が無いですね」って言って笑い合いました。
それから、近くにある公園まで散歩しました。気がつくと由美さんが私の手を握ってくれました。
由美さんの細い指が女性らしくて、素敵でした。手をつないでいると、気持ちが通い合うような気がして、ほんわかした、幸せな気分でした。
その公園は中に入るのに100円かかります。わたしの分を出そうとしたら、「ここはお姉さんに払わせてくださいね」と言われたので、手を引っ込めてしまいました。
「さっきのお食事代も払っていただいて、なんか申し訳ないです。」
「いいんですよ。私、初めてデートしてもらって、とっても感激してるんです。私の事お姉さんだと思って、甘えてくれませんか?」
「なんにもお返しできなくて・・」
「もう、仰らないで。いづみさんと一緒にいるだけで、訳もなく楽しいんですから。」
有料の公園だけあって、別世界のような静けさです。少し歩いて並んでベンチに腰かけました。
「いづみさん、美佳さんから大体伺っていますけど、みなさん、お互いに仲良くしていらっしゃるんでしょ?」
「それはつまり・・愛し合ってるっていう意味ですか?」
「はい、そういう意味です。」
由美さんは恥かしそうに俯いていました。
「変に隠してもあれですから、正直に言いますけど、美佳さんのおかげでお姉さまたちはみんな仲良くしています。わたしもその中の一人なんですけど・・」
「じゃあ、こうして私とデートしてたら、いけないのかしら?」
由美さんはそっとわたしの手を握って言いました。
「美佳さんに由美さんを困らせるようなことはしちゃダメよ、って言われましたけど・・」
「デートする事自体は反対されなかったのですか?」
「私たちから離れちゃいやよ、とは言われました。」
「じゃあ、困る事が無いように、お互い清い関係でいましょうね。」
「わたしもこうしてお話してるだけで、すごく楽しいんです。これからも仲良くしてくださいね。」
由美さんの握る力が強くなったような気がしました。
まわりに誰もいなかったら、由美さんにキスしてしまったかも知れません・・
「私も同じ事を考えていたんですよ。私は覚悟は出来ていますけど、その日が来るまでお預けにしても大人しく待っていてくれますか?」
「はい、それは大丈夫です。お姉さまたちに色々教わってしまいましたけど、由美さんの事は大事にしたいと思っていますから・・」
「嬉しい!いづみさんって私よりとっても若いのに、すごく大人なんですね。」
「お姉さまたちに色々仕込まれたせいかも知れませんね。」
そう言ってまた二人で笑い合ってしまいました。
「由美さん、初めて逢った時にわたしに言ってくれた言葉、覚えてます?」
「ええ、あの時からいづみさんに誘ってもらったら、嬉しいなって思っていたんですよ。」
「わたしもあの時の由美さんの表情が忘れられなくてつい、デートしてくれますか?って言っちゃいました。」
「じゃあ、本気じゃなかったんですね。いづみさんたら、ひどいわ・・」
由美さんは怒ったフリをしていましたが、本気じゃない事は誰が見ても判ります。
「由美さんはわたしのどんなところを気に入ってくれたんですか?」
「私、ずっと女の人ばかりのところで育ったから、男の人ってなんか怖かったんです。でも、初めていづみさんを見た時、この人ならついていけるかも知れないって思ったの。上手く言えないんですけど、中性的な魅力っていうのかしら・・」
「女の子になっても、少しは男の子が残ってるかしら?」
「そこまでは判りませんけど、今まで逢った人と違う事は確かです。」
なにかちょっと妖しい雰囲気になりそうでしたけど、由美さんが気分を変えるように言いました。
「いづみさん、ボーリングやった事ありますか?」
「2,3回くらいかしら。由美さんはよく行くんですか?」
「店長の冴子さんとお仕事帰りにね。スカッとして楽しくなるんですよ。一緒に行きませんか?」
「由美さんと一緒だったら、楽しそうですね。ところでデートの最後に「メゾン」に一緒に来てくれますか?」
「ご招待してくださるなら、喜んで。」
「じゃあ、美佳さんに電話してきますね。待ってるかも知れないし。ボーリングって時間かかります?」
「2時間もあれば大丈夫だと思います。」
美佳さんにお電話して、晩ご飯の用意をお願いしました。ボーリング場は案外近くにありました。
由美さんが手取り足取り教えてくれたので、初めてストライクが出た時は興奮しちゃいました。
そして、二人で手をつないで「メゾン」に向いました・・
わたしは駆け出したい気持ちを抑えてゆっくり玄関に向いました。
「いらっしゃい、由美さん。わざわざお迎えに来てくれてありがとう。この子、まだ女の子で外に出るの慣れてないから、面倒見てやってくださいね。」
「判りました、美佳さん。いづみさんが恥かしい思いをしなくて済むように、気を配りますので。」
「じゃあ、よろしくお願いしますね。もし行くところが無くなったら遠慮なくここに戻ってきてちょうだいね。大した事は出来ないけど、何かごちそうしますから。」
「じゃあ、夕方くらいにいづみさんをお返しすればよろしいですか?」
「そうね、こちらに来る前に電話してもらえば、何か用意しておきますから。じゃあ、二人とも気をつけてね。楽しんでらっしゃい。」
「いづみさん、私図書館が大好きなんですけど、一緒に行きませんか?」
「わたし、図書館って行った事無いんですけど、大丈夫でしょうか?」
「静かで落ち着いた場所なの。あまり大きな声を出さなければ、誰も気にしないですよ。」
「じゃあ、案内してくれますか?」
「喜んでご案内しますわ。一つ先の駅に図書館があるのを調べてきましたから。」
由美さんは先になって切符を買ったり、電車に乗る時もわたしを先に乗せてくれました。
図書館に入ってからもいろんな場所を見せてくれました。それから1冊づつ読みたい本を選んで、二人で並んで読書をしました。時々眼が合うと二人とも思わず微笑んでしまいます。
こんな素敵な場所がすぐ近くにあったのを今まで知りませんでした・・
「いづみさん、お腹空きませんか?」
図書館を出た後、由美さんが尋ねてくれました。
「はい、もうお腹ぺこぺこです。まるで男の子みたいですね。」
二人で声を出して笑ってしまいました。それから二人で静かなお店でパスタをいただきました。
由美さんはわたしより体が小さいのに、案外食欲があるのでびっくりしました。
「私昔から体が小さくて全然太れないから、たくさん食べるように言われてたんです。おかげで、今でも出されたものはみんな食べてしまうんです。女の子失格ですよね?」
「ううん、そんな事ないですよ。わたしだって子供の頃からいっつも前の方で、背の高い人が羨ましかったんですから。お腹いっぱいに食べられると幸せなんです。」
二人で「お互い色気が無いですね」って言って笑い合いました。
それから、近くにある公園まで散歩しました。気がつくと由美さんが私の手を握ってくれました。
由美さんの細い指が女性らしくて、素敵でした。手をつないでいると、気持ちが通い合うような気がして、ほんわかした、幸せな気分でした。
その公園は中に入るのに100円かかります。わたしの分を出そうとしたら、「ここはお姉さんに払わせてくださいね」と言われたので、手を引っ込めてしまいました。
「さっきのお食事代も払っていただいて、なんか申し訳ないです。」
「いいんですよ。私、初めてデートしてもらって、とっても感激してるんです。私の事お姉さんだと思って、甘えてくれませんか?」
「なんにもお返しできなくて・・」
「もう、仰らないで。いづみさんと一緒にいるだけで、訳もなく楽しいんですから。」
有料の公園だけあって、別世界のような静けさです。少し歩いて並んでベンチに腰かけました。
「いづみさん、美佳さんから大体伺っていますけど、みなさん、お互いに仲良くしていらっしゃるんでしょ?」
「それはつまり・・愛し合ってるっていう意味ですか?」
「はい、そういう意味です。」
由美さんは恥かしそうに俯いていました。
「変に隠してもあれですから、正直に言いますけど、美佳さんのおかげでお姉さまたちはみんな仲良くしています。わたしもその中の一人なんですけど・・」
「じゃあ、こうして私とデートしてたら、いけないのかしら?」
由美さんはそっとわたしの手を握って言いました。
「美佳さんに由美さんを困らせるようなことはしちゃダメよ、って言われましたけど・・」
「デートする事自体は反対されなかったのですか?」
「私たちから離れちゃいやよ、とは言われました。」
「じゃあ、困る事が無いように、お互い清い関係でいましょうね。」
「わたしもこうしてお話してるだけで、すごく楽しいんです。これからも仲良くしてくださいね。」
由美さんの握る力が強くなったような気がしました。
まわりに誰もいなかったら、由美さんにキスしてしまったかも知れません・・
「私も同じ事を考えていたんですよ。私は覚悟は出来ていますけど、その日が来るまでお預けにしても大人しく待っていてくれますか?」
「はい、それは大丈夫です。お姉さまたちに色々教わってしまいましたけど、由美さんの事は大事にしたいと思っていますから・・」
「嬉しい!いづみさんって私よりとっても若いのに、すごく大人なんですね。」
「お姉さまたちに色々仕込まれたせいかも知れませんね。」
そう言ってまた二人で笑い合ってしまいました。
「由美さん、初めて逢った時にわたしに言ってくれた言葉、覚えてます?」
「ええ、あの時からいづみさんに誘ってもらったら、嬉しいなって思っていたんですよ。」
「わたしもあの時の由美さんの表情が忘れられなくてつい、デートしてくれますか?って言っちゃいました。」
「じゃあ、本気じゃなかったんですね。いづみさんたら、ひどいわ・・」
由美さんは怒ったフリをしていましたが、本気じゃない事は誰が見ても判ります。
「由美さんはわたしのどんなところを気に入ってくれたんですか?」
「私、ずっと女の人ばかりのところで育ったから、男の人ってなんか怖かったんです。でも、初めていづみさんを見た時、この人ならついていけるかも知れないって思ったの。上手く言えないんですけど、中性的な魅力っていうのかしら・・」
「女の子になっても、少しは男の子が残ってるかしら?」
「そこまでは判りませんけど、今まで逢った人と違う事は確かです。」
なにかちょっと妖しい雰囲気になりそうでしたけど、由美さんが気分を変えるように言いました。
「いづみさん、ボーリングやった事ありますか?」
「2,3回くらいかしら。由美さんはよく行くんですか?」
「店長の冴子さんとお仕事帰りにね。スカッとして楽しくなるんですよ。一緒に行きませんか?」
「由美さんと一緒だったら、楽しそうですね。ところでデートの最後に「メゾン」に一緒に来てくれますか?」
「ご招待してくださるなら、喜んで。」
「じゃあ、美佳さんに電話してきますね。待ってるかも知れないし。ボーリングって時間かかります?」
「2時間もあれば大丈夫だと思います。」
美佳さんにお電話して、晩ご飯の用意をお願いしました。ボーリング場は案外近くにありました。
由美さんが手取り足取り教えてくれたので、初めてストライクが出た時は興奮しちゃいました。
そして、二人で手をつないで「メゾン」に向いました・・